ご不明な点がありましたら、下記連絡先まで何なりご用命ください
連絡先: Eメール TEL(0575)22−1358 FAX(0575)22−1358
ご依頼方法の詳細はここまで
はさみには非常にたくさんの種類があります。
裁ち鋏の他に、園芸用はさみ、生け花用ハサミ、料理鋏、手芸用ハサミ、工業用ハサミ等です
ここでは、ある洋服のリフォーム店さんからご依頼のありました
裁ち鋏の研ぎ直しを例に、当社の研ぎ直しの特徴
及び、作業工程をご説明いたします。
この鋏は所々に錆があり、以前研ぎに出された所
で下記のような、不適切な研ぎがなされています
1.刃裏の研ぎが刃と平行に研がれている
2.刃裏の樋底を無視して、包丁のように研がれている
3.小刃も同様に包丁を研ぐ方法で研がれている
裁ち鋏は包丁と同様な研ぎ直しをしては、
かえって切れなくなります
@ 刃と平行の研ぎ
鋏の裏は布しっかりとはさんで切断するため、研ぎ目(研ぐ方向)は
刃と交差する方向に研がなければなりません。
A 樋底をなくす研ぎ
鋏の刃裏は中心が雨樋(屋根の雨を受け流する所)の様にくぼんでいます
これを、鋏の刃裏における「樋底」と呼んでいます
これは、鋏を閉じる時の手の力が一点に集まり、それが刃元から刃先にかけて
スムースに移動させるための先人の工夫です。
これを包丁と同じように平らな砥石で研ぐと、この鋏のように樋底をなくすような
研ぎになってしまいします
B 包丁のような研ぎ
直接布に当たる部分を小刃と言います。
この部分も刃裏と同様、研ぎ目は刃と交差する方向に付けます
また包丁ほど鋭角には付けません
厳密には切る素材によって、角度は変えた方がよいのですが
一般的は45度程度が適切です。
また、包丁で言う蛤(はまぐり)研ぎのように丸くは研ぎません
@ 分解
まずは分解します
鋏はネジを外し分解した上で、一本一本
研ぎ直すのが基本です
なかには、元々ネジではなくリベットの物や、
ネジになっていても、さび付いたり
叩き込んだりして外せない物もあります
そのような物はやもうえず、そのまま研ぎ直します。
A 研磨
主にさび落としをします
刃裏以外に発生している錆を研き落とします
「羽布」という布を硬く縫い合わせ円形にした物を
研磨機に取り付け、研磨剤を塗布して磨きます
これにより、焼きが戻らず硬度を落とすことなく
研磨することができます。ただし
研磨は金属の表面に浮き出た錆は落とせますが
中に食い込んだ錆は、完全には除去できません
B 樋底を作る
刃裏が包丁を研ぐように、平らな砥石で研がれ
ているため、円筒形の砥石で樋底を削って作ります
左の画像は、その途中の画像です
真ん中が雨樋のように窪んでいきますが、刃の所は
残っているのがよく分かります
樋底は荒研ぎと仕上げ研ぎの2工程を掛けます
C 触点を作る
布のように張りがなく、繊維を織った材質を
切断するには、一点に力が集中する構造が
必要。そのために、組み合わせのネジと柄の
境目の所を削り落とします。
本来購入時にはそのようになっているのですが、
研ぎ直しの回を重ねる内に、その部分がなくなっ
てきます。そこで、あらためて作り直します。
これにより、一点に力が集中し、少ない力で切る
ことができるようになります。
D 小刃引き
直接切る対象物に当たるところに刃付けをします
刃と平行ではなく、ほぼ直角に付けます。
また、対象物の材質や厚みにより角度及び目の
粗さを変えます
裁ち鋏の角度は45〜50度 粗さは200番程度
が標準です。
皮革などはもっと鋭利でもっと細かい刃を付けます
お客さまに指定いただくこともできます
E 組み立て、調整
組み立てをし、実際に布を切って調整します
研ぎ込んで刃先のかみ合わせが不十分になった
物や尖ってしまった物は修正します。
良く切る材質があれば、その見本を送ってもらえれば
それによって試し切りをして、調整します。